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日本国内に厳然と存在する「暮らしにおける安心・安全の格差」 Azure x IoT を活用したシンプルなしくみでこの問題を解決する Secual

高所得者層では 14.7% なのに、それ以外はわずか 1% という、日本のホーム セキュリティ導入率。日本には明らかに、収入による「安心、安全の格差」が存在しています。この社会的課題を解決するため設立されたのが株式会社Secual (以下、Secual) です。その解決方法とは、低価格かつシンプルなデバイスによって、ホーム セキュリティ導入のハードルを一気に下げること。既に初回ロット 1,000 セットは完売しており、1 年間で 10,000 セットの販売を見込んでいます。今回は Secual の CEO 青柳 和洋 氏と COO 西田 直樹 氏に、同社が提供するセキュリティ デバイスの概要や事業化までの経緯、今後の展望などについてお話を伺いました。

写真右より、株式会社Secual CEO 青柳 和洋 氏、株式会社Secual COO 西田 直樹 氏

最小構成ならわずか 1 万円以内で購入可能
低価格かつシンプルなホーム セキュリティを提供

―― まず御社のビジネス概要をお教えください。

青柳 当社の主力事業は、IoT を活用したホーム セキュリティ サービスの提供です。センサーを窓に貼り付けていただき、家庭内のコンセントにゲートウェイを差し込んで使用します。ゲートウェイの横にはスイッチが 1 つだけ付いており、これを押すことで WPS (Wi-Fi Protected Setup) が作動、センサーとの通信が自動的に設定されます。不審者が侵入して窓が振動するとセンサーがそれをキャッチし、ゲートウェイからご家庭で契約しているインターネット回線を経由して、スマートフォン アプリに通知が送られます。

Secual が提供するセンサーとゲートウェイ。生活風景にとけこみやすいデザインを採用しています。

―― スッキリとした、いいデザインですね。

青柳 ありがとうございます。生活風景にとけこむ製品にすることを目指し、無印良品などのプロダクト デザインなどを手がける miyake design さんにデザインをお願いしました。セキュリティ関連の製品には無骨なものが少なくありませんが、このようなデザインにすることで「セキュリティは特別なものではない」という印象を持っていただきたいと考えました。これなら 1 人暮らしの女性の部屋でも、違和感なく使っていただけると思います。2015 年 9 月にはグッドデザイン賞も受賞しました。

―― 価格はどれくらいに設定しているのですか。

青柳 センサーが税込みで 1 枚 3,780 円、ゲートウェイが 5,940 円です。1 台のゲートウェイで、最大 10 枚のセンサーを接続できます。このようなステッカーも販売しています。ステッカーを窓や玄関に貼っておけば、防犯効果がさらにアップすると思います。

Secual のステッカー。 5 cm ✕ 5 cm のものから 18 cm ✕ 18 cm のものまで、4 種類のサイズが用意されています。

―― 最小構成なら 1 万円未満、これは安いですね。

青柳 オンライン ストアでお申し込みいただければ、3 日後には届きます。一般にホーム セキュリティの契約を行う場合には、セキュリティ会社の人が自宅に入って機器の設置や設定を行うことになりますが、Secual のサービスであればその必要もありません。設置工事や配線が必要ないので、簡単に使い始められます。


海外に比べてきわめて低い日本のホーム セキュリティ導入率
この社会課題を解決するため Secual の事業化へ

―― なぜこのような事業を始めようと考えたのですか。

青柳 経営コンサルティングを行う、イグニション・ポイント株式会社を 2014 年 6 月に起業したのですが、その活動の一環として社会的課題を解決する事業を創出していこうと考えたからです。その第 1 弾として、既に 2014 年 11 月からベトナムでの EC 事業を行っています。新興国ではクレジット カードが普及しておらず、明確な住所表記がない地域も少なくありませんが、このような状況でも一般家庭向けのロジスティクスを確立することを目指しています。3 営業日で配達できるしくみを作り上げ、フォト ブックを提供するサービスを始めています。新興国では都市部に若者が集中する傾向があり、故郷に残した家族とのコミュニケーションをどうしたらいいのかといった問題があります。フォト ブックというアナログなものを EC の上に乗せ、遠くにいる家族と写真をやり取りすることで、このような問題を解決したいと思っています。

―― Secual はその第 2 弾なのですね。ホーム セキュリティの領域には、どのような課題が存在しているのですか。

青柳 日本におけるホーム セキュリティの導入率が、世界的に見て非常に低いことをご存知ですか。欧米では 20% 程度なのに対し、日本はわずか 2 ~ 3% に過ぎません。その最大の理由は、日本のホーム セキュリティは比較的高額で、高収入な世帯しか導入できない状況にあるからです。実際、世帯収入が 2,000 万円以上では導入率が 14.7% になっていますが、1,000 万円以下は 1% と大きな差が生じています。つまり日本のホーム セキュリティは、一種の「高級品」なるのです。このような「暮らしにおける安心、安全の格差」は、望ましいことではないはずです。これを打破したいという想いから、カジュアルに利用できるサービスの開発を行うことにしました。

―― Secual の会社設立は 2015 年 6 月ですね。その後どのようにビジネスを進めてきましたか。

青柳 まず事業コンセプトを明確化し、それをもとにウィルグループインキュベートファンドからシード資金を調達しました。その後、デバイスの概要設計や基板設計などを進め、2015 年 8 月に Makuake でクラウド ファンディングをスタートしています。この時は 100 万円の設定で募集をかけたのですが、最終的に 600 万円を集めることができました。2015 年 12 月にはフジサンケイビジネスアイ主催の「革新ビジネス アワード2015」で大賞を受賞。同じ時期に第三者割当増資を行い、賃貸住宅事業を展開する AMBITION や民泊事業を展開するアドベンチャー、複数の個人投資家から、初期ロット製造のための資金約 6,000 万円を調達しています。2016 年 3 月には EC サイトも立ち上げ、5 月末に出荷を開始。初期ロットではゲートウェイ 1,000 台、センサー 3,000 枚を日本国内で製造したのですが、Makuake で申し込んでいただいた分も含め、6 月までに完売しております。

―― 裏面には確かに「Made in Japan」とありますね。

青柳 セキュリティ製品は信頼感が重要なので、「Made in Japan」という表記はぜひとも入れたかったのです。これと並行して 2016 年 5 月にも第三者割当増資を行っており、ベクトルとインベスターズクラウドから総額 1 億 5,000 万円の資金を調達しました。現在この資金で増産を進めているところで、次の出荷は今年の年末を予定しています。

―― 売上目標は設定していますか。

青柳 1 年間でゲートウェイ 10,000 台の受注を見込んでいます。IoT ベンチャーとしては、かなり積極的な出荷目標だと思います。


より多くのリソースを利用するため BizSpark Plus を活用
スピーディで手厚い人的支援も高く評価

―― 2016 年 4 月には BizSpark Plus にも採択されていますね。

青柳 実は Bizspark の存在は以前から知っており、イグニション・ポイントでも Plus ではない BizSpark を使っていました。しかし Secual ではデジタル領域にフォーカスした事業を行うため、より多くのリソースが必要です。これに伴うコスト増にどう対応するかを考えていたときに、マイクロソフトから BizSpark Plus のお話をいただきました。

―― それはいつごろですか。

青柳 2016 年 2 月です。「THE BRIDGE FES」でマイクロソフトのテクニカルエバンジェリストにお会いし、ここで BizSpark Plus のお話を聞き、その後も何度かお会いして、採択に至りました。

―― なぜマイクロソフトのスタートアップ支援を選んだのですか。

青柳 私は以前、他の会社でクラウド系の事業責任者をやっていたのですが、そのころのクラウドは AWS が圧倒的なシェアでした。しかし最近ではコアなサービスとしては成熟しており、PaaS としてのサービス強化に積極的になっています。その一方でマイクロソフトは、最近のトレンド調査でも伸びが著しく、実際に提供されているサービスも充実しており、オープン ソースへのコミットも積極的です。またマイクロソフトは、信頼性や安心感といったイメージも確立しています。Secual はセキュリティ サービスなので、ブランド イメージを高めるうえでも、マイクロソフトの選択が最善だと考えました。

―― Microsoft Azure の機能としては、具体的にどのようなものを活用されていますか。

西田 Application Gateway の負荷分散機能や SSL オフロード機能、仮想サーバー、ネットワーク仮想化、データ バックアップを使っています。最近では Machine Learning の活用も始めています。今後は Machine Learning の比重が大きくなっていくと思います。

―― 実際に使ってみて、どのような印象をお持ちですか。

西田 バックアップが日次で取得でき、データをセキュアに管理できる環境だと感じています。Secual のように小規模な会社で大きなデータを扱うには、このような特長はとても重要です。開発環境ではギリギリのリソースで作業を行っていたため、負荷が大きすぎて仮想サーバーが落ちることもあったのですが、障害発生時のリカバリーが簡単なのも助かります。またマイクロソフトの人的支援も手厚く、スタートアップに寄り添ってくれている、という印象を持っています。

―― 具体的には。

西田 たとえば 2016 年 4 月に「Microsoft Innovation Award 2016」で優秀賞とオーディエンス賞をいただいたのですが、このようなイベントの紹介や推薦を行ってくれました。

青柳 「Tech in Asia Tokyo 2016」へブースを出す機会もいただきました。他のクラウド ベンダーにもスタートアップ支援プログラムはあるのですが、マイクロソフトによる支援のスピード感は圧倒的で、フォローアップもとても丁寧です。

―― 今後使いたい Azure の機能はありますか。

西田 Azure IoT Suite や Azure IoT Hub を活用したいですね。また、既に Machine Leaning は使い始めていますが、今後はその結果を Power BI などでユーザーにフィードバックするしくみも作っていきたいと考えています。


将来は防災や見守りにも適用領域を拡大
広い意味でのホーム セキュリティ実現を目指す

―― 最後に、今後の展開についてお教えください。

青柳 Secual のゲートウェイは、ファームウェアやクラウド上のソフトウェアのアップグレードによって、機能拡張が可能です。この特長を活かし、今後は防災や見守りといった領域にも進出していきたいと考えています。セキュリティというとまず防犯を思い浮かべますが、これはあくまでも狭義のセキュリティであり、本来はもっと広い意味を持っています。身の危険を感じるインシデントへの対応を全てセキュリティと考え、適用領域を広げていきます。

―― 具体的にはどのような機能が提供されることになりますか。

青柳 たとえば防災では、地震速報などをゲートウェイで流す、といったことを考えています。防犯用途では利用していないのですが、ゲートウェイにはスピーカーが装備されているのです。

―― なるほど。それはいいですね。見守りも今後、大きな需要が見込めそうです。

青柳 高齢者のお宅に設置し、センサーの情報から異常が検知されたら、ご家族の方に連絡するといったサービスを考えています。また既存のセキュリティ会社などと連携し、駆けつけサービスを提供することも視野に入っています。

―― セコムやアルソックのようなセキュリティ会社との連携ですね。防犯市場で競合することにはなりませんか。

青柳 既存のセキュリティ会社の顧客は年収 1,200 万円以上の世帯であり、Secual は年収 400 ~ 1,200 万円程度の世帯でも使っていただけるカジュアルさを売りにしているため、競合にはならないと考えています。むしろ当社と連携することで、新しい市場への足がかりになるのではないでしょうか。この他にもゲートウェイに SIM を搭載することで、別荘やビニールハウスの防犯に活用していただくことも考えています。今年 8 月には湘南の海の家で利用された実績があり、十分に現実的なユースケースだと思います。

―― 見た目はシンプルなデバイスですが、実に大きな可能性を持っていますね。これでホーム セキュリティの導入率が高まり、暮らしの安心感が広がっていくことに期待したいと思います。本日はありがとうございました。

株式会社Secual

CEO を務める青柳 氏が起業したイグニション・ポイント株式会社が、2015 年 6 月に設立。低価格で簡単に使え、生活にとけこむデザインを持つデバイスを提供し、日本におけるホーム セキュリティ導入率向上を目指しています。2016 年 5 月には初期ロット 1,000 セットを出荷し、わずか 1 か月で完売。最初の 1 年間で 1 万セットの販売を見込んでいます。

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